風流温泉 番頭日記

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内田喜十はヤマメの産地として有名な甲府の温泉旅館篠笹屋の番頭である。番頭といってもピンからキリまであって彼はいわばキリのほう、朝から晩までテンテコ舞いで好きな釣を楽しむどころではない。逗留中の釣好きな作家、井能先生と親切な女中のおしげさんと顔を合せることがなぐさめだった。ある日、貿易会社の社長と名乗る男が贅沢三昧をいってさんざんいばりちらした揚句に、連れの女給多美子を置き去りにしてドロンした。その上多美子の財布まで持ち逃げしたので彼女は宿賃のかたにここで働くことになり、代わりに年寄りの母を抱えたおしげさんは故郷に帰って行った。

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